皆様、ユニバーサルデザイン(UD)をご存知ですか?
ユニバーサルデザインは、作る視点ではなく、使う視点を重視したデザインです。
1980年代にアメリカのロナルド・メイス博士によって「さまざまな人々が、どこでも、分け隔てなく安心して使える製品を開発することが、未来をめざす製品作りの基本になる」と呼びかけ広められました。
そんなユニバーサルデザインについて考えるヒントとなる自動販売機をWheeLoggersのmomotoyaさんと、Monchanさんが投稿してくださいました。
日本はいまや、世界有数の自販機大国です。そんな経済を動かしている自動販売機にユニバーサルデザインは必須ともいえるのではないでしょうか?
目次
ベルク 自動販売機
手がとどく!!by momotoya
https://app.wheelog.com/map/custom/admin/map?spotId=19747
わ~おっ!と印象に残りますね。このような背の低い自動販売機は初めて目にいたしました。小さなお子様や、車いすユーザーさんにとっては画期的とも言えるようなデザインなのかな?車いすユーザーの私にとって背の高い自動販売機はボタンが届かず諦めることも多いので嬉しいです。
しかし、どうでしょうか?商品の見える位置、押しボタン、コインの挿入口、商品を取り出す位置は、車いすユーザーにとって使いやすくても背の高い方や、腰を曲げるのがお辛い方にとっては使いやすいでしょうか?かがまないといけないような低い位置にありますね。
誰にとっても使いやすくするにはどんなデザインが理想的でしょうか?
これを考える比較対象となるつぶやきがこちらです。
こちらの自動販売機は、上段の選択ボタンに連動したボタンを低い位置にも設けています。これにより、小さなお子様や車いすを利用される方でも無理なく上段の商品を選ぶことができます。もちろん大人や腰を曲げづらい方にも利用しやすいように、ちょうど良い高さに商品の取り出し口が設置されています。また、コインの投入をスムーズにするために、投入口は受け皿型となっており、一度に複数投入できるようになっています。
もうひとつ駅構内の自動販売機設置例があります。
駅構内の低い自動販売機は、高さが無いため見晴らしが良くなり、遠くにある上部の案内板が見やすくなっています。案内板が見えないのは不便ですもんね。また、先ほどの背の低い自動販売機は、設置場所の上部を見てみると天井が低く、背の高い自動販売機は置けないようにも見えます。
この2つの例から、自動販売機を低くしたのは、人が使いやすいためというより、設置場所を考慮しているようにも感じます。
何を優先に考えるのか?によってデザインは変わってきます。世の中は複合的で自動販売機だけが単一に設置されているわけではなく、周囲の環境との兼ね合いも必要となってきますね。
誰もが安心して使いやすいものにすることは想像以上に難しいですね。ある人にとって使いやすくてもある人にとって使いづらかったり、他の要素が阻害されたりすればユニバーサルデザインではなくなります。
【更新】2023年、さらに進化した「QRコード対応」自動販売機
この記事を執筆した2019年時点では、自動販売機やボタンの「高さ」という物理的な対応でユニバーサルデザインの対応がされていました。
その後、スマートフォン機能と組み合わせたデジタル技術による新たなユニバーサルデザインの自動販売機が登場しました。
この自動販売機には、スマートフォンを活用した機能が2つ搭載されています。
1つ目の機能は「Coke ON」アプリです。このアプリを使用すると、自販機に近づけたスマートフォンの画面に飲料リストが表示され、タップやスワイプで購入が可能です。音声選択や電子マネー決済にも対応しており、視覚障がい者にも使いやすい設計になっています。
もう1つの機能は、2023年に導入されたQRコード対応の「QR de決済」です。自販機に付属するQRコードをスマートフォンで読み取ると、アプリを使わずに飲料リストが表示され、15種類の電子マネーから選んで決済ができます。
これらの機能により、車いすユーザーや視覚障がい者、外国人観光客など、幅広いユーザーが簡単に利用できるようになりました。
デジタル技術による世界のめまぐるしい変容により、ユニバーサルデザインもまだまだ進化し続けるでしょう。「誰もが利用できる」は多種多様な人々との共存の中ではとても難しい課題だと思いますが、ようやくDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)が形になりスタートしはじめたと感じます。今後の更なる進化が楽しみです。
「ユニバーサルデザインの7原則」
使う人の年齢や性別、障害などに関係なく、同じように使うことができるもの。不安、不満、不都合を可能な限り改良し続けること、それが、ユニバーサルデザインの基本概念です。
最後に「ロナルド・メイスによるユニバーサルデザインの七原則」をご紹介しておきましょう。
1:だれもが使える
https://www.dydo.co.jp/corporate/jihanki/story/story4.html
どんな人であっても使いやすく、受け入れられるデザインであること
【例】 自動ドア、低床バス,低床電車,コードレス掃除機
2:柔軟に使える
幅広い個人の好み、及び能力に適合するデザインであること
【例】階段、エレベーター、エスカレーターと選択できる、タッチパネルと押ボタンがある現金自動受払機、左右どちらの手でも使えるはさみ
3:簡単に、かつ直観的に使える
使い方が簡単に理解でき、使う人の経験、知識、言語、意識の集中の度合いに依らずに、使うことのできるデザインであること
【例】押しボタン式スイッチ、差し込み方向を示すプリペイドカードの切りこみ、シャンプーとリンスを区別するためのシャンプーボトルの凹凸
4:わかり易い
情報の取得に努力する必要がなく、また、使用時の周囲の状態、及び使う人の感覚能力に依存しないデザインであること
【例】液晶パネル案内板、ピクトグラム(絵文字)を用いた表示、音声と視覚情報を併用した駅の列車案内
5:誤用を許容する
故意ではない、あるいは、意図しない行動によってもたらされる事故、及び被害をできる限り抑えるデザインであること
【例】パソコン等の「元に戻すボタン」、プラットホームの二重扉、 扉を開けると停止する電子レンジ、便座に腰掛けないと作動しない温水洗浄便座
6:弱い力で使える
効率よく気軽に、最小限の身体への負担で、使うことができるデザインであること
【例】プリペイドカード、レバーハンドル式のドアノブ、商品を取り出しやすい自動販売機、タッチセンサーつきの照明器具
7:使うのに適切な大きさと広さをもつ
身体の大きさや、動かせる範囲に関わりなく、近づく、手を伸ばす、操作するといった動作に差し障らない大きさ、あるいは広さであること
【例】だれでもトイレ、料金投入口の大きな自動販売機、ボタンの大きなリモコン・電話機
皆様も身のまわりの誰もが使いやすいユニバーサルデザインについて考えてみませんか?誰にとっても優しい街になると思います。
momotoyaさん、Monchanさん大切なことを考えるきっかけをつくってくださりありがとうございました。
(Hiromi)
ユニバーサルデザイン・バリアフリー情報をシェアする「WheeLog!」
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