一般社団法人WheeLogは、3月15日(月)に赤羽国土交通大臣より、国土交通省バリアフリー化推進功労者大臣表彰を受けました。
授与式で赤羽大臣から『本年開催予定の東京オリンピック・パラリンピック競技大会のレガシーは「真の共生社会の実現」であり、ユニバーサルデザイン、バリアフリー社会へ前進するターニングポイントの一年としていきたいと強く決意しているところです。本日受賞された取組のように、他の模範となる先進性や波及性等に優れたすばらしい取組を顕彰させて頂くことにより、「バリアフリーが当たり前の社会」の実現に繋がることを、心よりご期待申し上げます。』とお祝いの言葉をいただきました。
https://www.mlit.go.jp/page/kanbo01_hy_007879.html
授賞式のあと、赤羽大臣は授与式に参加していたWheeLoggersとも一緒に記念撮影してくださいました。大臣はユーザーが参加して作り上げているWheeLog!の活動に大変興味を示され、今後もバリアフリー化推進のために活動を注目していきたい旨を語られました。
赤羽国土交通大臣の授賞式挨拶
本日表彰を受けられた2団体の皆様におかれましては、平素よりバリアフリー化の推進に多大なるご貢献をいただいておりますことを、心から敬意と感謝を申し上げる次第でございます。本当にありがとうございます。
本年開催予定の東京オリンピック・パラリンピック競技大会のレガシーは「真の共生社会の実現」であり、私はバリアフリーの進捗度合いは、その国の品格や国民・社会の成熟度を端的に表すものと考えております。
その観点から成熟国家であるわが国におきまして、バリアフリー政策は福祉政策ではなく高齢社会における当然の公共政策として、さらに加速されるべきものだと考えております。
本年4月から改正バリアフリー法が全面施行されますが、これを受けまして学校教育との連携や車いす使用者用の駐車施設などにおける適正利用の推進など、これまで必ずしも十分ではなかった心のバリアフリーを中心としたソフト面での取組につきましても、より一層強化されることとなります。
このような取組を通じまして、本年もユニバーサルデザイン、バリアフリー社会へ前進するターニングポイントの一年としていきたいと強く決意しているところでございます。
まず、本日受賞されたWheeLog!様におかれましては「車いすでもあきらめない世界」を目指され、車椅子利用者の方も健常者も皆が一緒に参加する、スマホ上のユーザ投稿型バリアフリーマップという画期的なプラットフォームを構築されました。
さらに全国各地で車いす利用者と健常者による街歩き体験を展開され、まさに心のバリアフリーの推進のための取組も実践されていただいております。
また一昨年11月、北海道倶知安で開催したG20観光大臣会合の場においても、大変素晴らしいプレゼンテーションをしていただきまして、各国の代表の皆様、大変高い評価をしていただいておりました。
(中略)
これらの取組は、他の模範となる先進性や波及性等に優れた大変すばらしい取組であり、本日顕彰させていただくことによりまして、こうした取組が日本中に広がり、「バリアフリーが当たり前の社会」の実現に繋がりますことを強くご期待を申し上げる次第でございます。
国土交通省といたしましては、このような素晴らしい取組の普及啓発並びに真の共生社会に向けて、最大限の取組を進めて参りますことをお約束申し上げますので、皆様におかれましては多様なニーズにマッチしたより先進的な取組に、なお一層のご尽力を賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げる次第でございます。
結びになりますが、この度の選考の労をお取りいただきました選考委員会委員長の秋山哲男先生をはじめ、選考委員の先生方のご労苦に改めまして心から感謝申し上げ、そして本日ご列席の皆様の益々のご健勝とご活躍をご祈念申し上げ、私のご挨拶とさせていただきたいと思います。
皆様本日は大変におめでとうございました。
記念講演会
授与式に先立って、記念講演会が開催され、選考委員である中央大学教授の秋山哲男先生から講評があり、またWheeLog代表の織田が取組内容を発表しました。
記念講演のスピーチ全文(一般社団法人WheeLog代表 織田友理子)
人のために尽くせる、幸せな人になる。これは私が高校2年生の1997年に文集に認めた言葉です。
しかし、大学4年生22歳のときに、遠位型ミオパチーという聞いたこともない進行性の筋肉の病気と診断を受けました。その後、医師の勧めから2005年に結婚、26歳の時に男の子を出産しました。
息子を産むときに、母親が車椅子だからといって、寂しい想いをさせないと決めていました。しかし、毎年夏になると海に連れて行けないことを申し訳なく思っていました。そんなある日、息子が3歳になった頃、茨城県の大洗町にバリアフリービーチがあるとの情報をインターネットで見つけました。そのおかげで家族と一緒に海で楽しむことができました。
この体験を通して私は、バリアフリー情報があれば、車いすユーザーの世界が変わると実感しました。同時に3年間悩んでいたのは何だったのだろうと思いました。同じ悩みを抱えてしまう人を1人でも減らすために、ブログやYouTube車椅子ウォーカーでバリアフリー情報を配信し始めました。しかし、すぐに1人だけの発信には限界があると痛感しました。
ちょうどこの頃、東京オリンピック・パラリンピックが決まりました。当然重度障害者がパラリンピック選手になることは難しいですが、参加や観戦が難しい人でも、誰でも貢献できる仕組みは作れるはず。いろいろな人と手をつないで、みんなで双方向に情報を共有していける、そうしたプラットフォームがつくれればと思い、「みんなでつくるバリアフリーマップ」の構想を思いつきました。
2015年3月にGoogleインパクトチャレンジで、この構想を発表したところ、グランプリを受賞し、アプリの開発費を獲得することができました。2017年5月にはWheeLog!アプリをリリースし、六本木で開催したリリースイベントには小池都知事も参加してくださいました。
移動に困難を抱える人に活用してもらえますように。車椅子だからと悩む期間を短く、浅くできますように。そんな想いを込めてアプリを作りました。
WheeLog!アプリは主に2つのバリアフリー情報を共有しています。一つ目がスポット情報です。これは、車いすで利用できる場所を、地図上にマッピングし、写真やコメントで詳細な情報を共有しています。もう一つは「走行ログ」です。これは、車いす利用者がスマートフォンのGPSを使って、移動経路を記録しています。この車椅子の走行情報を共有しているアプリは、世界で唯一WheeLog!だけです。この2つの情報により、スポット情報という”点”の情報が、走行ログという”線”の情報でつながり、車いすユーザーが必要とする”面”の情報を得ることができます。
また、ユーザー同士の交流が生まれるようにSNSの機能も充実させました。車椅子ユーザーが自分の外出を自慢するだけのアプリにならないように、外出できない人も一緒になって、バリアフリー社会に寄与できるように設計しました。
オープンデータも積極的に取り込んでいます。特に東京都は、写真や緯度/経度情報がある完璧なオープンデータが7500件もあり、活用させていただいております。
WheeLog!の取り組みは、ただバリアフリー情報を収集して共有するだけに留まりません。なぜなら、バリアフリー情報を集めるだけでは課題解決につながらないからです。そこで必要になるものが、心のバリアフリーです。
WheeLog!では車いすでの街歩き体験を通して、心のバリアフリーを醸成しています。これにより、車いすでもあきらめない持続可能な社会を構築し、SDGsの達成に貢献します。
これまで毎月のように全国各地で開催していた街歩きイベントはコロナの影響で開催が難しくなりました。しかし、そんな状況でも前に進むため、昨年9月からオンラインを活用してイベントを開催してきました。このイベントは、全国に散らばって、各地域で小単位でグループを編成して、その各地域をオンライン上でつながりながら、街歩きします。今までは東京や大阪など、その場所に行かないと参加できませんでしたが、この方法なら全国どこからでも参加できます。WheeLog!は逆境があっても歩みを止めません。
次に、アプリユーザーからの語りです。
安田恭子さん
『あなたの「行けた!」が誰かの「行きたい!」になる』このキャッチコピーが大好きでアプリを使っています。WheeLog!を通して、誰もが好きな時に自由に出かけられる、それが凄いことではなく、当たり前になる社会になるといいなと思っています。
岩城一美さん
車椅子になって気がつかないうちに引きこもりに。でもWheeLog!には健常者も障害者も心にバリアがない、あたたかい人達が集まっていた。WheeLog!に出会えてまた昔の自分を取り戻せた。そのきっかけを作ってくれたWheeLog!を、今度は私が伝えていきたいです。
星佳代さん
WheeLog!が発信するメッセージは、当事者からの発信に留まらない。WheeLog!を通して、地域社会や人とのつながりがうまれる。バリアを作ること、無くすことは人である!WheeLog!なら皆でバリアを越えていけると感じられる!
乾元英さん
車いすユーザーにとって必要な情報は、実は一人ひとり少しずつ違います。だからこそ健常者も一緒に自分の街や外出先で見つけたバリアフリー情報を投稿することで、誰かの”選択肢”が広がっていくんです!
WheeLog!最高技術責任者で島根大学助教の伊藤史人先生
テクノロジーは世界をきっとよくします!人はどんなことでも「楽しい」があってこそ、自らの意志で続けることができます。WheeLog!は、人とつながる楽しみ、人に役に立つ楽しみなど、たくさんの楽しみを提供してくれます。これらは、ネットワークやセンサー技術など、最先端テクノロジーがあってこそ実現できました。これからもWheeLog!は進化します。そして、世の中をもっと楽しくしていきます!
WheeLog!アプリはユーザーがそれぞれの立場によってそれぞれの価値を見い出してくれています。教育・観光・まちづくり・地域共生など、可能性は無限大にあります。どんなことがあってもWheeLog!はユーザー達と語り合い、寄り添った活動をしていきたいです。
ユーザー参加型のWheeLog!は世界で一番あたたかい地図です。健常者と障害者が一緒になって、フラットな世界で活動しています。なんとユーザーの7割が健常者です。全ての人がバリアフリー化に貢献できるアプリです。
開発費は毎年かかり、ユーザーが増えていけば増えていくほど、アプリの維持のための費用がかかりますが、経済格差によって情報格差を生むべきではありません。これからもアプリは無料で提供していきます。
私は遠位型ミオパチーだけでなく多発性硬化症にも罹患しており、2018年末には急激に病状が悪化しました。しかし、WheeLog!はWorld Summit Awardで世界一、ドバイ万博のEXPO LIVEでGlobal Innovatorに選出、マサチューセッツ工科大学のMIT SOLVEで多数の賞を受賞するなど、一歩も引かず世界に挑戦し続けています。
若かりし高校2年生の時に決意したように、私は本気で「社会に貢献していきたい」です。今はほとんど体が動かず、自分で食べたり飲んだりもできませんが、人の価値はできる出来ないで変わるはずはないと信じています。それを、WheeLog!の仲間達みんなと共に、証明していきたいです。
本日よりまた、心に大いなる希望を持って、精いっぱい、生き抜いてまいります。
以上、本日は、国土交通省バリアフリー化推進功労者大臣表彰という名誉ある賞を頂き、大変にありがとうございました。