【イベントレポート】医療・介護のプロから学ぼう! 〜摂食嚥下障害とその具体的な支援の方法とは〜

今回のクラウドファンディングでは、WheeLog!アプリに「摂食・嚥下障害」に関する機能を追加する予定です。そこで、ウィーログでは普段なかなか馴染みのない「摂食・嚥下障害」について勉強会を開催しております。
今回は、摂食・嚥下障害に取り組まれている専門家の3人の先生をお呼びし勉強会を開催いたしました。

イベント概要

①クラウドファンディングで取り組む活動(講演:織田友理子)
②嚥下食提供の歴史とこれまでの取り組み(講演:井口健一郎)
③摂食嚥下障害の基礎知識と直面する人々の日常生活や課題(講演:阿部 学)
④嚥下調整食・介護食の作り方やその工夫について(講演:在川一平)
⑤クロストーク・質疑応答

●登壇者

井口健一郎
社会福祉法人 小田原福祉会 理事
特別養護老人ホーム潤生園 施設長

桜美林大学 非常勤講師、和泉短期大学非常勤講師、平塚看護大学校 非常勤講師。
潤生園は、日本で初めて「介護食」を研究開発し、当時の園長 時田純氏が平成3年(1991)、「日本栄養改善学会」から「学会賞」を受賞している。以来、潤生園では、「食はいのち」をモットーに「最期まで口から食べる」を実践している。潤生園の「食介護」は内閣官房健康・医療戦略室が進める海外に紹介すべき「日本の介護」として取り上げられている。

阿部 学
認定言語聴覚士(摂食・嚥下障害領域)

2007年に横浜のリハビリ病院に入職。回復期リハ病棟、神経難病、外来、訪問でのリハビリテーションを経験する。VF(嚥下造影)検査アドバイザーにも従事する。現在は、東京都町田市の訪問看護ステーションに勤務。
地域で“食”と“コミュニケーション”を軸に『私らしく生ききる』を支える関わりを模索中。『あなたの存在や役割は、きっと誰かのかけがえのないピースになる』と信じて活動をしている。
神奈川県失語症者向け意思疎通支援事業、訪問リハビリテーション振興財団研修班、日本言語聴覚士協会介護保険部、神奈川県回復期リハ病棟連絡協議会、リハビリ100人カイギ、などに関与。

在川一平
介護食シェフ
株式会社フードケアの介護食シェフ。 介護食を「簡単に」「美味しく」作れるよう日々研究している。 調理を通じて、介護食を作る人も食べる人も笑顔にできるよう、 全国各地で調理実習などの活動をしている。
・調理実習実績(対面・オンライン) 年間50回以上のセミナーを2018年~現在まで実施。
・日本摂食嚥下リハビリテーション学会新潟大会(JSDR2019)の栄養士交 流会にて学会発表。JSDR2022では3演題を発表。同学会2023では4演題を発表予定。

織田 友理子

NPO法人ウィーログ代表
2002年に難病「遠位型ミオパチー」の診断を受け、2008年にその患者会「PADM」を発足させる。2014年にバリアフリー情報を発信するYouTubeチャンネル「車椅子ウォーカー」を開設。2015年のGoogleインパクトチャレンジでバリアフリーマップのアイデアを発表しグランプリを受賞。2017年にバリアフリーマップ「WheeLog!」アプリをリリースする。”車いすでもあきらめない世界をつくる”をミッションに掲げ活動を展開。国土交通省バリアフリー化推進功労者大臣表彰、ドバイ万博 Expo Live Global Innovatorなど、国内外で多数のアワードを受賞している。著書『LOVE&SDGs 車いすでもあきらめない世界をつくる』(鳳書院)

講演内容

①クラウドファンディングで取り組む活動(織田友理子)

▼WheeLog!の活動って何をしている?

初めてこのイベントでWheeLog!を知った方が多かったため、WheeLog!の活動について初めにお話しさせていただきました。

「車いすでもあきらめない世界をつくる」ためにアプリの機能や車いす街歩きプログラムや全体の事業の取り組みについてお話ししました。

食事支援(えんげ食)の課題

ウィーログは、バリアフリー情報を多様な人々に届けるための取り組みを進めています。先日は、イベントを開催したり、今回のイベントによってまずは「食事支援(えんげ食)の課題」について知っていただく必要があります。

今回のクラウドファンディングで目指すこと 

今回のクラウドファンディングではレストラン情報に食事支援のための情報投稿・検索機能を追加していきます。レストランや社会が寛容になり受け入れることができるように、ウィーログの活動を通して、課題となっていることが少しでも解決できるようにしていきたいと思っています。また、この社会で貢献できる活動を、障害者だけの留められたものにするのではなくて、多様な方々と一緒に問題解決をみんなで力を合わせて取り組んでいきたいと思います。

②嚥下食提供の歴史とこれまでの取り組み(井口健一郎)

最後のワンスプーンまで口から食べる
社会福祉法人小田原福祉会特別養護老人ホーム潤生園は、1984年に嚥下食を日本で初めて開発した施設です。食の潤生園と昔から有名な施設であり、「最後のワンスプーンまで口から食べる」ということを重要視されています。最後まで口から食べていただくことにこだわり続けていらっしゃいます。

食事支援の重要性
寝たきりや認知症の多くは低栄養が基礎にあります。体調が良好に維持できるためには、栄養素と水分摂取がキーワードとなります。そして、食事の提供にあたっては、「食べてもらえる食事」を作ることが鍵となります。 潤生園では介護食は見た目や味に工夫を凝らし、現在約140のメニューを提供されています。

最後までその人らしく生きる支援
潤生園では、入居者が最後まで自分らしく充実した生活を送ることを大切にされています。『死を看取る介護だけでなく、入居者が自分らしい生き方をできるよう』にサポートをされています。入居者一人一人の希望や意向を尊重し、個別のニーズに合った支援を提供することが介護の目標とされています。

③摂食嚥下障害の基礎知識と直面する人々の日常生活や課題(阿部 学)

飲み込み(嚥下)の体の仕組み

食事をするとはどういった体の動きをしているのかを、動画を用いて詳しく教えていただきました。

飲み込みには5つの段階があり、一番はじめには「先行期」といって食べ物の認知・認識をする時期があります。食事の匂い、作るときの音や見た目などによって、食欲を刺激し唾液や胃液が出てくること食べるための準備が行われます。例えば、梅干しを見たら口の中に酸っぱく感じ、唾液が出てきたりします。過去のそれぞれの方々の経験の記憶に基づいた食事の匂いや見た目が、食欲を刺激することの重要性になるとのことです。

嚥下障害の原因や調子を見る目安・口腔ケアの重要性

嚥下障害における原因や調子を見るポイントについて具体的に教えていただきました。飲み込みにくい、むせる、食事のスピードが遅くなったり、食後に痰が絡みやすくなるなどのサインに注意することが重要です。また口腔ケアの重要性やグッズについても教えていただきました。

また、口の中は細菌が多くあるため、しっかりと口の中をきれいにしていないと誤嚥性肺炎という肺炎になりやすくなります。しっかりと口の中をきれいに保つことで誤嚥性肺炎の予防になります。

飲み込みが弱った時に行う対応方法・とろみ食の必要性や環境調整の重要性

飲み込みの筋力を鍛える方法について具体的な方法が紹介されました。

また食べにくい食品についても教えていただきました。『刻み食』(細かくで刻んだ食事)も一見食べやすそうですが、まとまりがつきにくくて口の中でバラバラとしてしまいます。そのため、トロミなどでまとまりをつけるような加工が有効だそうです。

環境調整では座っている姿勢では足を床にしっかりとつけることやベッド上での姿勢のポイントなども教えていただきました。

④嚥下調整食・介護食の作り方やその工夫について(在川一平)

嚥下調整食とは?

「クッキーや煎餅を普通に食べることはできますが、例えば5回だけで噛んで飲み込んでください」と言われると非常に難しくないでしょうか?口の中で食べ物を噛んでまとめげることがしづらい方々にとって、こういったところに配慮されたものが嚥下調整食だそうです。

調理の工夫と事例

嚥下調整食の作り方には、切り方やつなぎの活用が含まれます。適切な調理法を知り、実践することで、ご家庭でも嚥下調整食を作ることができるとのアドバイスがありました。油揚げの切り方や野菜の噛み切りを考慮した切り方など、具体的な事例が紹介していただきました。また嚥下調整食は、感覚的な作り方では一貫性が欠けるため、お菓子作りのように計量や手順、とろみ剤の使用などを工夫する必要があるとのことです。

▼具体的な動画や実物をお見せいただきました

動画を用いて、実際の嚥下調整食の作り方を視覚的にわかりやすく教えてくださいました。また油揚げの切り方や焼き肉ゼリーの作成したものなどを動画や、実際につくっていただいた実物を見せていただき、より具体的なイメージを持つことができました。

クロストーク

夢・社会問題への想い

井口健一郎

『支援する側として、当事者がどんな状況であっても幸せに暮らしていける。「食」って幸せを支える一番大事なところ。あきらめないようにできるようにしていきたいなと思います。』

阿部 学

『外食業界で嚥下食はどうしても色々と手をかける必要があり、高くなってしまう。特別な日の位置付けは多い。日常的なお値段で食べられるところが増えていくと良いなと思います。実際に行って体験してみることを、専門職や、当事者の方も一緒にまぜこぜでできるような場ができるといいなと思います。』

在川一平

『嚥下調整食という括りではなくて、『インクルーシブフード』など自社の製品を使って発信していっています。こういったものを開発しつつ、常食の方から嚥下調整食が必要な方まで同じものを一緒に食べられるものなどを発信しています。歯科の先生や言語聴覚士さん、管理栄養士さん、調理師さんなど色々な方々と繋がらさせていただいています。また、一般のレストランで柔らかくて飲み込みやすいお食事を一緒に考えてほしいということで、一緒に取り組みをさせていただいています。まだまだ足りないなと実感しているので、何かお役立てできれば、チャンスを頂ければ一緒に広げる活動をしていきたいと思います。』

●参加者の声(一部紹介)

参加者の皆様からは素敵なご感想をいただきましたので、一部ご紹介させていただきます。

より深い嚥下食事の事を知る事が出来ました。 柔らかくすることにより、栄養価が下がるとは思いもしませんでした。

最後まで自分らしく生き抜く支援の一端として食事支援を位置付けて活動されている皆様の言葉に勇気づけられました。◎家族が小さい子どもだった頃、トロミ剤は一種類しかなく、加えると味が落ちてしまうが安全に食べることを選ぶか、美味しいが食べにくい食事をとるかの悲しい二択に日々泣かされました。支援に携わってくださる方々に嚥下障害を伝えることもとても難しい日々でした。けれども年月を経て安全に食べることを楽しむ環境になりました。Wheelogの活動もきっと、そしてずっと速く、街に出ることを楽しむ環境を整えていくことと信じています。

嚥下食を美味しくしたいとずっと思っていました。摂食嚥下困難な患者さんから「好きだったものを食べたい」「嚥下食は美味しくない。餌のようだ。食べたいのに。」「死んでもいいからもう一度食べたい」という言葉を聞くたび、悩みながら食器やスプーンの工夫、トロミの付け方やトロミ粉の食べ比べなど、思いつく工夫をしていました。今回のイベントで、たくさんの工夫を知ることができ、こんなにも美味しそうな食事を作り、摂取してもらうことができるような工夫がたくさんあるんだと感動しました。ありがとうございます。

お礼とお願い

この度は、イベントにご参加いただき本当にありがとうございました。ウィーログは車いすユーザーのお困りごとを解決し、社会問題に対してウィーログが少しでもお役に立てればと思っています。登壇していただいた先生方がされているようなことを、少しでも後押しできればといいなと思っています。ぜひ皆様どんな形でも良いので、応援していただけますと嬉しいです。ずっと、活動を見守っていただけますとありがたいです。いつでも自由に外出できる世界ができるといいですねなどコメントも多くいただいています。もっと、ウィーログのあたたかい世界をもっと広げていきたいと思っています。次のネクストステージである777万円を目指し、どうか皆様ご支援いただけますよう、よろしくお願いいたします。

▼クラウドファンディング 車いすでもあきらめない世界をつくる!ウィーログ2023
https://readyfor.jp/projects/wheelog2023

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