車いすユーザーもみて学べる!沖縄の人気スポット5選

沖縄在住の車いすユーザー、ノスケさんに沖縄の人気スポットを5つご紹介いただきました。これから沖縄旅行を予定されている方は必見です!

観光地として絶大な人気を誇る沖縄。都道府県の魅力度を伝えるランキングでは毎年上位にランクインしていますが、昨年度の観光客数をみてみると「国内観光客数が726万人で過去最多、外国人観光客数は126万人で国内外あわせると853万人と過去5番目に多い数字」となっています。沖縄は一年を通して温暖な気候にくわえ、海と豊かな自然、そして食べ物も美味しく、「おじい・おばあ」など住む人々の温かさも、人気を支える大きな理由といえるのではないでしょうか。

今回は沖縄に生まれ、脳性まひで幼い頃から家族やヘルパー、友人の力を借りて車いす生活を送るノスケが、「WheeLog!」アプリの情報と自分で歩き調べ得た情報をもとに「沖縄の頻気スポット5選」と題し、ご紹介します。

①戦場になった歴史を伝える 沖縄の「平和祈念公園」

今から79年前の太平洋戦争末期、沖縄では住民を巻き込んだ地上戦がくり広げられました。「沖縄戦」(おきなわせん)です。「20万を超える尊い命が失われ、そのうち住民は9万4千にのぼりました」。4月1日の本島上陸から米軍との攻防をくりかえしていたものの、日を追うごとに戦のながれは悪くなり、日本軍の組織的戦闘が終わったとされる6月23日(慰霊の日)前には糸満市まで侵攻していました。摩文仁(まぶに)はさいごの戦闘がおこなわれた場所として多くの住民が逃げまどい、あすを生きようと必死に駆け回った場所でした。

そのような戦争のつめあとが色こく残る沖縄には、各地に犠牲者をしのぶ「塔」(とう)や石碑がたてられ、なかでも平和祈念公園には沖縄戦で命を落としたすべての犠牲者の名前をきざんだ『平和の礎』があります。平和祈念公園は戦争の悲惨さ、残酷さそして平和について考えるひとつの発信地となっているのです。

車いすユーザーノスケからみたバリアフリー環境

平和祈念公園のバリアフリー環境は、観光施設ということもあって子どもからお年寄り、あるいは障害の有無にかかわらず多くの人たちが利用することができます。出入り口の段差はなく、敷地が広いので車いすでも安心して移動することができ、資料館が隣接しているので沖縄戦について学びを深められる施設です。

また、資料館は障害者手帳を提示すると入場料が無料になり、バリアフリートイレや障害者専用の駐車スペースも5台ほど完備されています。日本のみならず世界中から観光客が訪れる観光名所です。

②沖縄のメインストリート「国際通り」

続いて紹介するのは、地元民から観光客まで幅広く人が行き交う沖縄のメインストリートとよばれる「国際通り」。歴史をみていくと、大正9年(1920年)に沖縄県庁が現在の泉崎(いずみざき)に移転したことをきっかけに県庁と首里をむすぶ新しい道をつくる必要が生じ、昭和7年(1932年)から2年にわたる工事が始まりました。県庁前から安里にのびる県道は1.6キロにおよび、昭和9年に完成したものの当初は人どおりもあまりない道でした。国際通りが現在のにぎわいをみせるようになったのは戦後になってからのことで、荒れはてたまちから時代のうつりかわりとともに那覇の『復興のシンボル』になっていったのです。

車いすユーザーノスケからみた 国際通りのバリアフリー環境

現在、国際通りはデパート・レストラン・洋服屋・おみやげ品店など数多くのお店が立ち並んでいます。道路から一本なかに入っていくと平和通りがあり、道路沿いは車や歩行者の通行量が多い印象ですが、アーケードをくぐれば車いすの方もゆっくり商店街を楽しむことができます。そして多くのお店にスロープがもうけられているのも、とても魅力的なポイントです。

国際通りのなかにある沖縄県民の台所「牧志公設市場」

平和通りのなかを車いすで歩いていると活気溢れる雰囲気とともにみえてきたのは、牧志公設市場です。こちらはお土産品はもちろん、観光客だけでなく県民の台所として今もなお多くの人々から愛され続ける市場です。そのはじまりは昭和23年(1948年)に那覇市開南(かいなん)の市役所跡地にあった闇市の露天商(ろてんしょう)を、那覇市が収容したことに由来します。建物の老朽化で工事がはじまり、一時は仮施設にうつりましたが、現在は建物も完成して鮮魚店や精肉店、青果店などさまざまなお店が軒を連ねています。

そして2階は食堂です。ステーキやトンカツなどのお肉を中心としたメニューのお店もあれば、お刺身や魚料理のお店、そしてタコライスや沖縄そば、ゴーヤーチャンプルーといった沖縄料理がメインのお店など豊富にあり、どこも連日にぎわっていて「お昼すぎにはご飯ものを終了するお店もあります」。

車いすユーザーノスケからみた 牧志公設市場のバリアフリー環境

牧志公設市場のバリアフリー環境は、建物のたてかえによりどなたにも利用しやすいよう、ととのえられています。市場の出入り口は自動ドアのため段差はなく、エレベーターやバリアフリートイレも設けられています。食堂にある椅子は移動することができるので車いすのままでも食事が可能です。(※車いすによってはテーブルまで遠くなることもあり。)スタッフさんの声かけが細やかで、快適に過ごすことができる施設です。駐車場については近隣のパーキングエリアを使用するしかないので、車かモノレール・バスを利用しています。

③琉球の王や各国の要人をもてなした「識名園」

次に紹介するのは識名園(しきなえん)です。沖縄はかつて琉球王国としてさかえ、中国や東南アジア地域との貿易のなかで独自の文化を発展させてきました。政治の中心地であった首里城から南に約3kmの高台にある識名園は、琉球の王族たちの安らぎにくわえ、中国からきた皇帝の使者である『冊封使』(さっぷうし)をもてなすための迎賓館として1799年、尚温王の時代につくられました。沖縄戦によって建物が破壊されるなど大きな影響を受けましたが、復元されたのち2000年には世界遺産に登録され、現在は中国系の観光客をはじめ世界中から多くの人々が訪れるスポットとなっています。

車いすユーザーノスケからみた 識名園のバリアフリー環境

 識名園のバリアフリー環境は、入り口付近に駐車場があり、障害者専用の駐車スペースとバリアフリートイレも完備されています。バリアフリートイレについては、広いつくりなので付き添いの方と一緒に入室しても快適に利用可能です。

入場料は障害者手帳の提示で免除となり、車いす利用者の場合は入場前に車輪の確認をして、必要な方には車いすの貸し出しもあります。琉球王国時代の景観や雰囲気を大切にしている施設なので、園内の通路は琉球石灰岩で険しくなっているなど、見学のさいは付き添いの方がいると安心です。建物(御殿)と周辺の芝生は、とても綺麗で車いすでも移動できます。

帰り道はきた道をたどるのですが、地面がゴツゴツしているので安全確認をしたうえで前輪をあげる(ウイリー)など工夫してすすむとスムーズです。

④海のそばで新鮮な鮮魚と特産物が揃う「奥武島いまいゆ市場」

 奥武島(おうじま)は沖縄南部の南城市の小さな島で、周囲1.6㎞。橋があるので車や自転車で行くことができ、天ぷら屋さんや鮮魚店など美味しい食材が揃っています。ゆっくりとした時間と綺麗な海が広がり、地元の学生たちが泳ぐ姿がとても印象的です。海の満ち引きによって海岸まで近づくことができ、海の違った一面が見られる場所もあります。

 また、奥武島には鮮魚店や地元の食材を販売するお店が集まった交流施設『いまいゆ市場』があり、県産にこだわった、とれたばかりの新鮮な魚を求めて大勢のお客さんでにぎわうスポットです。

車いすユーザーノスケからみた いまいゆ市場のバリアフリー環境

いまいゆ市場のバリアフリー環境は、施設前には4.5台ほど停められる駐車スペースがあり、施設横入り口にはスロープがついています。となり合わせで鮮魚店などのお店が入っているので通路はお客さんの有無で通りやすさが変わりますが、車いすによっては狭い印象です。バリアフリートイレも完備されているので、車いす利用者をはじめとした障害のある方やお年寄りなども快適に過ごすことができる施設です。

⑤沖縄の海を体感できる日本最長の「美ら海水族館」

 最後に紹介するのは沖縄美ら海水族館です。北部の本部町(もとぶちょう)にあるこちらの水族館は、「沖縄の海をそのまま展示する」をコンセプトとして2002年にオープンし、「浅瀬からサンゴの海、熱帯魚の海、黒潮の海から深海の海と、沖縄のすべての海を見せる内容豊富な展示が人気」です。世界最長飼育記録更新中のジンベイザメやナンヨウマンタなどさまざまな魚がいる「黒潮の海」の大水槽は大迫力で訪れた人を惹きつけています。そんな美ら海水族館は、ジンベイザメの繁殖の知見が少ないことから世界初の繁殖プロジェクトを飼育とともに行っている施設であり、また展示方法については水面から水深700メートルまでを再現し、沖合・黒潮・深海のならびにすることで沖縄の海を擬似体験できる工夫がされています。

 また、解説プログラムを取り入れたり、年に数回の企画展を開催するなど、「何度訪れても新しい発見がある、海の興味が尽きないつくりを目指した」魅力のつまった水族館です。

車いすユーザーノスケからみた 沖縄美ら海水族館のバリアフリー環境

美ら海水族館のバリアフリー環境をみてみると、「まず料金は身体障害者手帳等、いずれかの手帳を提示すれば本人とその付き添い人(1人)まで免除となり、補助犬との入場も可能」です。(認定証:使用者証)

車いす利用者が入館する場合には「4階の表の入り口からエレベーターで3階に降りて入館します」

エレベーターがあるので車いすで自由に移動でき、主要エリアの各所にバリアフリートイレがあります。場所によっては手すりがついていて車いすで横付けして利用できたり、館内の手洗い場には車いす利用者専用が設けられているところもあります。

駐車場については「海洋博公園内に4箇所、20台の専用駐車スペースが確保されており、必要な方に向けては「車いすの貸し出し」を行うなど、バリアフリー環境がとても充実した施設です。

今回は沖縄の南部を中心に、夏のおすすめスポットを5つご紹介しました。沖縄というと「海」や「自然」、「美味しい食べ物」というイメージがありますが、こうして歴史も一緒にみていくと琉球王国時代には周囲の国々と交流を深め、一方で沖縄戦では大きな被害を受けた地でもあります。そこから力を出し合い、生活を発展させていくなかで国際通りや美ら海水族館などの観光地が生まれ、現在に繋がっています。まちを歩くと鮮魚店も多い沖縄は、市場もあらゆる場所にあるので、「沖縄のリアル」を感じることができます。観光地としてバリアフリー環境が整えられている場所が増え、障害の有無にかかわらず楽しめるスポットが多いいま、”自分だけの沖縄”を見つけるのも新たな発見になるかもしれません。移動のしやすさや空間の広さ、使いやすさは人によって異なりますが、その情報が多く集まって新たな魅力が生まれる、そのような地域のひとつとして沖縄が広まれば嬉しいです。

これから夏本番、あなただけの沖縄を見つけにきませんか?

参考文献

①平和祈念公園の紹介

  • 南風原町史編集委員会編『南風原町史第9巻 戦争編本編 戦世の南風原ー語る のこす つなぐー』(2013)沖縄県南風原町p11

バリアフリー環境情報横 写真左:自分で撮影 (右:wheeLog!スポット投稿weekndさん「平和祈念公園・資料館」

②国際通りと牧志公設市場

  • 施設情報:MD事業部(松尾笑美子)ほか編『ニッポンを解剖する! 沖縄図鑑』(2017)JTBパブリックp114-115         牧志公設市場p110
  • バリアフリー情報(WheeLog!スポット投稿necoluckyさん「牧志公設市場」より)
  • 写真:自分で撮影

③識名園 

  • MD事業部(松尾笑美子)ほか編『ニッポンを解剖する! 沖縄図鑑』(2017)JTBパブリックp56
  • 写真:(WheeLog!スポット投稿 weekendさん「識名園」)

奥武島 いまいゆ市場

⑤美ら海水族館

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