2月25日(土)に東京日本橋エリアで、Rare Disease Day(世界希少・難治性疾患の日、以下RDD)イベントの一環として、車いすとアイマスク&白杖を体験する街歩きイベントを開催しました。今回はRDD Japanさんとコラボし、参加者70名以上となる過去最大規模のイベントとなりました。
イベントでは、主催のRDD Japan代表 西村由希子さん、WheeLog代表の織田友理子から挨拶し、会場をご提供いただいた武田薬品工業株株式会社の松井繁幸さまにもご挨拶をいただきました。司会は、理学療法士でWheeLog!の運営委員でもある安西祐太さん。東京の町田や神奈川の相模原で街歩きイベントを多数開催してきた経験を活かし、ユーモラスな司会進行で、会場を沸かせてくれました。
当日、街歩きに参加されたカーリーさんから、参加レポートをいただきました。ぜひご覧ください。
目次
参加レポート(カーリーさん)
なぜ僕がこのイベントに参加するのか?
今から約5年前に進行性の難病の悪化により車椅子ユーザーとなりましたが、今は車椅子を使った日常生活にも慣れてきて、色々なところへ外出する機会も増えてきました。そんな生活の中で定期的に参加しているのが「WheeLog! 街歩きイベント」です。
長い入院生活を経て車椅子ユーザーとして自宅に戻った頃を思い返すと、全てがバリアでしかありませんでした。狭くて傾いた歩道、道路の段差や割れたアスファルトの穴、お店の入口の段差、etc…
しかし、慣れとは恐ろしいもので、当初はバリアだと思っていた事を今では諦めてしまいバリアに対しての気付きが薄れてしまっています。この気付きを大切にして移動に困っている人たちへ共有するために街歩きイベントに参加しています。
今回のイベントは「車椅子を使った街歩き体験&アイマスクを装着して白杖を体験する」という、非常に興味深い内容でした。開催地は都市開発が進んでいる東京都の日本橋エリアで、とても綺麗な街並みとなっています。
そして会場は武田薬品工業さんのグローバル本社ビル、参加者70名が各班に分かれて、それぞれ指定された場所へ向かってバリアフリー調査を行います。僕の班は「ミッドタウン八重洲でバリアフリーを調査せよ!」というミッションでした。これをメインミッションとしてバリアフリー調査をしつつ、もう一つのビンゴミッションも楽しみます。(これがまた面白い!)
さぁ!出発です。目的地までのルートを調べると片道20分弱の道のりで、比較的真っ直ぐで広い歩道が続くので雑談をしながらスタートしました。班のメンバーも交代しながら試乗用の車椅子に乗り、実際に車椅子での移動を体験してもらいました。歩道に少し傾斜があるけど段差が少ないので思っていたよりはスムーズに移動ができました。(それでも倍の時間がかかりました)
次は段差も少なく歩道の幅も広いので、アイマスクを装着し白杖を使っての移動体験を始めました。ふらふらしながら歩き出してすぐに「平らな歩道なのに真っ直ぐ歩くって難しい」という言葉が出ました。目が見えている僕たちは無意識に真っ直ぐ歩くことができるので、目から入る情報って本当に大事なんだなと思いました。
そこで僕たちは「ある事」に気付きました。白杖を使って歩いているものの、何を目印にすれば良いのか?杖を左右に動かしますが平らな歩道からは何も情報を得ることができませんでした。その「ある事」とは「この歩道には点字ブロックがない!」本当に大きな気付きでした。普段は平らで車椅子でも移動がしやすいと思っていた歩道も、視覚障害者にとっては目印が無く恐怖でしかありません。そんな気付きを共有しながらミッションをこなしていきます。
少し時間がかかりましたが無事にミッドタウン八重洲に到着。早速、施設の中に入ってバリアフリー調査をしようと思いエリアマップを確認すると、「2023年3月10日グランドオープン」の記載が・・・。なんとグランドオープン前で施設の中に入ることは出来ませんでした。これは意図的にミッションを難しくして調査を楽しませるための主催者の罠かと思いました。(※主催者も知らなかったみたいです)
気持ちを切り替えて、このエリアのバリアフリー調査を行うため目的地を八重洲地下街へ変更しました。レストランやバリアフリートイレなどを調査し、ゲーム感覚のビンゴミッションでもある、スポット投稿、走行ログ、グループで記念撮影などを行い、帰り道は地下鉄を利用してスタート地点の会場へ戻ってきました。
会場に戻ったら街歩きで気付いた事などを各班ごとに発表します。僕たちの発表の時間、生後5ヶ月のリーダーは疲れて爆睡中だったので僕が代理で発表しました。車椅子ユーザー当事者としての気付き、班メンバーの体験後の気付き、自治体への要望や今後の期待などを各班ごとに共有していきます。多くの方がバリアフリー調査を体験する事で、生活の中での関心度も高まってくると思います。
各班、初対面の人が多くてスタート時は緊張感がありましたが、調査を終えて戻ってくる頃には完全に打ち解けて一体感が現れていました。ほんの数時間一緒に行動しただけでみんなが笑顔になり、気持ちが通じ合い心のバリアフリーという素晴らしい環境も生まれてきます。だから僕はこのイベントが大好きなのです。WheeLog!を通じて新しい人と出会い、人と人との繋がりを大切にしていくために、これからも積極的に参加していこうと思います。
Special Thanks (from 事務局)
会場のご提供
会場は武田薬品工業株式会社さまのグローバル本社をご提供いただき、社員の皆様もスタッフとしてご協力くださいました。6階の会場を使わせていただきましたが、入口やトイレなどに誘導の案内表示も設置いただくなど、細やかな配慮もいただきました。この度は多大なご協力を賜り、心より御礼申し上げます。
車いすのご提供
街歩きで使用した車いすはダスキンヘルスレントさまからご提供いただきました。しっかりと整備された車いすで安全に街歩きを実施することができました。いつもご協力いただきありがとうございます。
岡部宏生さま(一般社団法人境を越えて理事長)
一般社団法人境を越えての理事長である岡部宏生さまより、イベントの際にコメントをいただきました。以下、全文を紹介いたします。
私はALS患者当事者の岡部宏生と申します。
発病17年で呼吸器をつけて13年になります。
今日は皆さんとご一緒に歩いてはおりませんが、こちらで合流させて頂きました。
褥瘡が出来てしまっているのでご容赦ください。
先程皆さんがまとめていらっしゃった気づきポイントや改善点などを伺って、このウィーログの活動の大変さを改めて思います。
私もコロナ前は月に20日前後外出していました。
皆さんと同じ様に気づきが改善される事を強く願う者の1人です。
30年前は駅のバリアフリー率がほぼゼロに近いものでした。
現在東京都では95%の駅がなんらかの方法によりバリアフリーになっています。
また駅に設置されているエレベーターは20年前は1台2億円でした。
現在は5000万円なので普及がしやすくなってきました。
これらの恩恵は障害者より、お年寄りやベビー連れの方の方がはるかに受けています。
皆さんご存知の通りです。
でもこうした社会環境の変化は車椅子利用者などの活動がもたらしてくれたものです。
私は駅を例にしてお話ししましたが、ウィーログの様な活動が駅以外の環境の改善に大きく貢献していくものだと思っています。
これは障害者問題ではなくて社会全体の問題です。
ウィーログとそのお仲間の活動の益々の発展を心より祈念しております。
早く褥瘡を治して私も街歩きに参加したいと願っています。
今日はこの会に参加させて頂きありがとうございました。
お声がけしてくださったアスリットの西村さんと御関係者の皆様と武田薬品様に感謝申し上げます。
ボランティアの皆さま
朝早くから会場の設営や受付対応など、ご協力いただきありがとうございました。いつも陰ながら支えていただき感謝でいっぱいです。
参加者の皆さま
イベントにご参加いただきありがとうございました。最初は初対面で緊張されたかもしれませんが、街歩きを通して、班の皆さんと仲良くされている姿を見て、とても嬉しかったです。またぜひお会いできるのを楽しみにしております。
オンラインイベント登壇
2月28日には、RDD Japanが主催するオンライン配信イベント「RDD Japan 2023 in Tokyo」に、事務局メンバーが3名がゲスト出演しました。(4:10:17〜出演)。25日に開催した街歩きの話や、WheeLog!についての紹介をしております。