
2025年5月29日、ウィーログ事務局は宇宙航空研究開発機構(JAXA)の調布航空宇宙センター飛行場分室を訪れ、航空機バリアフリー研究の最前線に触れる機会を得ました。当日ご紹介いただいたのは、〈メタモルフィック・ラバトリー〉と名付けられた次世代機内トイレのモックアップです。これは「誰もが安心して空を旅できる未来」を具現化する象徴的なプロトタイプであり、狭い機内という構造的制約を乗り越える大胆なアイデアと精緻な設計思想が詰め込まれていました。
車いすユーザーの視点での革新



まず目を引いたのは、トイレ前面の壁が横方向にスライドし、通路幅が瞬時に倍以上へ拡張される仕組みです。車いす利用者が自走で便座正面に回り込める余裕が生まれるだけでなく、介助者が同時に入っても無理なく動ける広さが確保されます。これにより、長距離フライト中でも地上のバリアフリートイレと同等の安心感を得られると実感しました。
次に印象的だったのが、スペース拡張と同時に引き出せるおむつ交換台・簡易ベッドの存在です。体位変換が必要な利用者や、小さなお子さま連れの乗客にとっても、機上で快適にケアを受けられる環境が整います。
航空機バリアフリーを取り巻く現状と課題
国際福祉機器展で同モックアップを体験した来場者の97.1%が「導入を希望する」と回答したというデータが示されていました。一方、制度上は「機内トイレのバリアフリー化率100%」と報告されていても、実際には座席間の通路幅や介助スペースの不足など、現場からは切実な課題が数多く寄せられています。
機内トイレは「移動」を支えるインフラ

今回の視察を受け入れてくださったJAXA航空技術部門の皆さまに深く感謝申し上げます。社会に散在する体験と技術をつなぎ、制度を動かし、一日も早くバリアフリーなフライトを「当たり前」に――ウィーログはこれからも“車いすでもあきらめない世界”を実現するために歩み続けます。
【6月26日(木)@排泄ケア機器展2025】代表の織田友理子が登壇します
2025年6月26日(木)に開催される「排泄ケア機器展2025」にて、NPO法人ウィーログ代表理事・織田友理子がセミナーに登壇します。
「空のバリアフリー 排泄の課題を考える」をテーマに、メタモルフィック・ラバトリーを開発した宇宙航空研究開発機構(JAXA)の安岡哲夫氏と共に、移動や外出の自由を支えるバリアフリーの視点から、排泄をめぐる課題とその可能性について語ります。
ご関心をお持ちの皆様のご来場を、心よりお待ち申し上げております。