【イベントレポート】「空のバリアフリー 排泄の課題を考える」─排泄ケア機器展2025 安岡哲夫氏×織田友理子 対談

「空を飛ぶ自由」を当たり移動できる社会は、まだ道半ばです。2025年6月26日、大阪・ATCエイジレスセンターで開かれた「排泄ケア機器展2025」のセミナーに、宇宙航空研究開発機構(JAXA)研究員の安岡哲夫さんとウィーログ代表理事・織田友理子が登壇し、「搭乗前」「フライト中」「トイレ利用」という3つの視点から、課題と展望について語り合いました。

イベント概要

1. 機内に入るまでの課題

織田は、搭乗ゲートでの“移乗”や、リクライニング機能のない機内用いすの姿勢保持の難しさについて率直に語りました。「空港に着いた瞬間から心が縮こまってしまう」と話します。
安岡さんは、JAXAの調査で導き出された62の提案の一部として、自分の車椅子に乗ったまま過ごすことができる座席装置や車椅子として使用できる着脱式座席装置についてご紹介していただきました。

2. 座席に座っている間の課題

織田は、横になれる体勢を確保するため、夫の膝に足を載せられるよう座席は3席確保する必要と話しました。
また「私は体幹と頭が支えられないので座っていられないのですが、離着陸時に横になれるかどうかは航空会社によって対応が異なる」とも語り、会場からは驚きの声があがりました。

安岡さんは、「ストレッチャーのまま搭乗できる座席装置」というストレッチャー利用者がストレッチャーに横になったまま、機内での移乗なしに搭乗できる座席装置についても紹介していただきました。

3.トイレを使う時の課題

「国内線では100%我慢。国際線でもトイレに行かないことがあります」と語る織田の言葉に、参加者の皆様も驚かれていました。狭い通路を夫に抱えられて移動し、客室乗務員に人が来ないようにブロックをしてもらうという現実。そして、便座に背もたれも手すりもない状況で座ることの大変さについて語りました。

安岡さんは「通路を可動式にして、座席配置の工夫で介助スペースを確保する新設計」の概要を紹介しました。実寸大モデルで二人介助の検証も行われており、多くの参加者がその可能性に注目していました。

「“トイレに行けるかどうか”は、人としての尊厳の問題です」と織田は述べ、「価値観が変われば、それに応じた投資を選ぶ企業も増えるはずです」と安岡さんがお話しされました。お二人の言葉から、権利保障と技術革新が同じ未来を目指していることが伝わってきました。

JAXAが示す未来像――次世代機内トイレ「メタモルフィック・ラバトリー」

これに対し安岡さんは、〈メタモルフィック・ラバトリー〉と名付けられた次世代機内トイレを紹介されました。これは「誰もが安心して空を旅できる未来」を具現化する象徴的なプロトタイプであり、狭い機内という構造的制約を乗り越える大胆なアイデアと精緻な設計思想が詰め込まれています。織田は「トイレに行けるかどうかを自分で選択できる環境は人権の問題です」と話し、双方の発表は、空のバリアフリーの社会変革の必要性を浮き彫りにしました。

▼メタモルフィック・ラバトリーについてはこちら
https://fanfun.jaxa.jp/jaxas/no098/02.html

会場で交わされた意見交換

質疑応答の時間になると、まずマイクを握ったのは鉄道車両のデザイナーの方でした。
「鉄道は車両幅は決して広くないのですが、飛行機なら、きっとまだゆとりを生み出す工夫ができるはずと」航空分野へのエールと期待を送ってくださいました。
また別の参加者からは、「最近は主要空港でもペット用トイレが導入され始めています。次は“人”のアクセシビリティをいっそう高める番です。と空のバリアフリーのアップデートへの視点を示していただきました。

まとめ

参加者の方々と記念撮影

お越しくださった皆さま、開催を支えてくださった排泄ケア機器展事務局の皆さま、そして貴重な知見を共有してくださった安岡哲夫さんに、心から感謝申し上げます。
ウィーログは空のバリアフリーがもっと拡大してい未来の実現に向けて活動を広げていきますので、引き続きの応援をどうぞよろしくお願いいたします。

イベントの告知

🛫 空のバリアフリー最前線!~JAXA×ウィーログが描く未来のフライト~

最新のバリアフリー航空トイレ「メタモルフィック・ラバトリー」を題材に、移動の自由とインクルーシブな空の旅について深く語り合います。
このイベントでは、技術革新と当事者の声をつなぎ、制度の現実と理想のギャップをお話ししていきます。「未来の空の旅」はどんなふうに変わっていくのか、一緒に考えてみませんか?

🎯 こんな方におすすめ
 • 旅行や飛行機が好き。でも「すべての人にとって快適な空の旅」って本当に実現してる?と気になる方
 • 車いすユーザーや高齢者、誰もが安心して移動できる社会を目指す活動に関心がある方
 • 「JAXAがトイレを開発?」と思わず気になった方
 • 制度の“理想”と現場の“リアル”をつなぐ声に耳を傾けたい方
 • モビリティ・ユニバーサルデザイン・公共交通の未来に興味がある方

🌟 イベント概要

イベント名:空のバリアフリー最前線!~JAXA×ウィーログが描く未来のフライト~


日時:2025年7月11日(金)20:00〜21:00(19:15より集合)
参加費:無料
会場:Zoom(申込者に参加URLを通知します)
配信:主催 ウィーログ(アーカイブあり)
申込締切:2025年7月11日 19:00まで

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