目次
はじめに

2025年12月から2026年1月にかけて、台湾南部の屏東(ピンドン)県、および北部の台北市を訪問し、台湾における最新のバリアフリー対応を視察してきました。
シリーズ第3回となる本レポートでは、台北市内の各区に設置され、市民の健康維持の要となっている「市民スポーツセンター(運動中心)」の先進的な取り組みについて詳しくお伝えします。
水際まで途切れないバリアフリー

今回訪問した「台北市南港運動中心」では、スタッフの方の案内でプールのバリアフリー設備を視察しました。
特筆すべきは、プールサイドまでの動線と入水支援の充実ぶりです。車いすや親子で使えるトイレとシャワーを確保した広々とした「バリアフリー&ファミリー更衣室」が2室あり、そのままプールにつながっていました。


また、入水専用の車いすが用意されていて、プールに設置されたスロープを使って入ることができます。さらに、移乗して使える「プール用昇降リフト」も設置されています。


スタッフによれば「毎日のように車いすユーザーの方が泳ぎに来られている」とのこと。設備が単なる「展示」ではなく、日常的にフル活用されている点が印象的でした。
行政建設・民間運営(OT方式)がもたらす「最新の環境」


台北市のスポーツセンターの大きな特徴は、「OT方式(Operate-Transfer:運営・移管)」が採用されている点です。これは行政が施設を建設(ハード)し、その運営(ソフト)を民間企業に委託する手法です。
この仕組みにより、公設施設でありながら、館内には民間のフィットネスクラブに引けを取らない最新設備とサービスが導入されています。
例えばジムエリアにおいても、車いすでの利用が当たり前の風景となっています。実際に定期的に通ってトレーニングに励む車いすユーザーの方もおられ、その活気は一般の民間ジムと遜色ありません。
行政が「バリアフリーという権利」を担保し、民間が「通いたくなるクオリティ」を提供することで、誰もが足を運びたくなる質の高い健康拠点が実現していました。
台北市12区すべてで標準化されたアクセシビリティ

こうした手厚い対応は、決して一部のモデル施設に限ったことではありません。 台北市内にある12の区すべてに設置されたスポーツセンターにおいて、同様のバリアフリー基準が実施されています。また、他の市でも同様にバリアフリー対応が進められています。
台北市全体で「運動中心」が、障害者にとっても主要な健康維持の拠点として機能して、実際に利用されている事実は、都市インフラとしての完成度の高さを示しています。
旅行者でも使える間口の広さ


市民スポーツセンターは、市民に限らず、海外旅行者も含めて「誰でもその場で利用できる」という間口の広さも特徴です。
多くの施設が1時間単位の都度払い(ドロップイン)を採用しており、面倒な会員登録の壁がありません。最新の設備と万全のサポート体制を、必要な時に、必要な分だけ、旅行者であっても等しく享受できる。この心理的・制度的なハードルの低さが、真のインクルーシブ(包摂的)なスポーツ環境を支える大きな要因となっていました。
さいごに

台北のスポーツセンターは、まさに「誰もが健康を追求できる場所」を体現していました。
ハード(最新設備とリフト)、ソフト(民間運営のノウハウ)、そしてシステム(都度払い制と全区標準化)。これらが見事に噛み合うことで、車いすユーザーが日常的に汗を流す光景が、都市の「当たり前の日常」として根付いていました。

