今年、群馬県立伊勢崎興陽高校でWheeLog!教育プログラムを使った授業が行われました。担当の中山見知子教諭から授業の報告をいただきましたので、今日と明日の2回にわたりご紹介させていただきます。
はじめまして。伊勢崎興陽高校で福祉を教えています中山と申します。今回はWeeLog!と本校の関わりについて報告せよ!という指令が下ったので、思いつくまま、まとめてみます。よろしくお付き合いくださいね。
さて、WheeLog!を私に教えてくださったのは、DET群馬の飯島さんです。飯島さんが「中山先生なら面白がるかと思って」みたいな感じで、ご紹介くださいました。WheeLog!を初めて見て、「これは良い教育ツールになる!」と直感しました。まず、アプリというのが良い。高校生にとってアプリは身近なお友達ですから。また、バリアフリー情報が全世界の人と共有できるのが良い。授業の中でバリアフリーマップなどを作成することも多いのですが、その情報をどうしよう、という悩みが以前からあったのです。
おもしろい!ということで、早速やってみよう、とDET群馬さんに相談すると、話がトントン拍子に進み、2018年7月3日に高校教育として初めてWheeLog!を実施することとなりました。
代表の織田友理子さんにも無理を言って本校に来ていただき、本校を中心に2km圏内の範囲について調査を行いました。
当日はすごく暑くて、群馬県ですから本当に暑くて、実施も危ぶまれました。しかし、生徒さんたちは文句一つも言わず、積極的に調査を行ってくれました。
生徒さんたちは、普段の生活では気がつかない段差、買い物のしにくさなどに気づき、逆にバリアフリートイレの鏡の高さや角度へ配慮があることを知ることができました。
こうしたことを、話して伝えるのは簡単ですが、自分で車椅子に乗って体感することで、生きた知識となるのではないかと思います。さらに、DET群馬の皆さんがいくつかの班に同行してくださったのですが、生徒同士では気がつかないことをユーザーの方に教えていただくことができるので、ユーザーの方と一緒の方が深い学びになることも気がつきました。(ある生徒さんの感想を最後に添付しておきますね)
調査対象の商店・機関には、全く事前にお話をしていなかったので、生徒がそれぞれの場所で写真撮影の許可などの交渉もしました。意外なところからNGやOKをもらい「何でも先入観で考えてはだめね」と生徒と話をしたのが印象的でした。
また、予想したとおり、アプリを使っての授業ということに生徒さんは魅力を感じ、楽しんで調査ができたようでした。情報を全世界と共有できるというのも大きな魅力だったようですね。
調査後に学校に帰着して、それぞれのグループが、織田さんに喜んでいただけるであろう群馬の銘菓を献上し(笑)まとめを行いました。体験や活動授業で大切なことは振り返りを行うこと。そして、考え方・行動を変容させることだと考えています。代表の織田さんより「車椅子ユーザーからのお願い」としてまとめていただき、生徒の学びをさらに深めることができました。
また、高校として初めての試みということで、NHKなど多くのメディアにも注目していただき、嬉しい限りでした。
この取り組みで使用した資料などについては、教育プログラムとしてHPでも紹介していただいています。ただ車椅子に乗って街に出るだけでなく、買い物をする、ビンゴカードに書いてあるミッションを達成するなどの仕掛けを施すことでより、アクティブな学びになると思いますよ。
群馬県立伊勢崎興陽高等学校
福祉系列長 中山見知子
【生徒さんの感想】
WheeLog!を利用した今回の授業を通して学んだことや考えされる場面は多々あった。
授業の為に学校まで足を運んでくれた織田さんを始めとした車椅子ユーザーの方々には以前お世話になったDET群馬の人たちもいて、こうして多くの人が協力してくれるからこそ成り立つ授業だと感じた。
私達の班は伊勢崎市役所が目的地と言う割と近場だった。一緒に高橋さんも回ってくれることになって実際に車椅子ユーザの声を聞きながらスポットを巡ることが出来た。
市役所の前に寄った快活CLUBでは多目的トイレを撮影した。普段は使わないのであまり意識したことはなかったが、自分が車椅子に乗って多目的トイレを見ると、健常者用のトイレとは違って鏡が下に向かって斜めになっていたり、手すりがあったりなど「何故?」と思ったことに関しては高橋さんが説明してくれたので納得してからスポットを回ることが出来た。移動する際も歩く時は気にならなかった小さな段差やガタガタしたアスファルトの崩れた道などが車椅子だと衝撃を受けて揺れて、くぼみに車輪が引っかかったりしてスムーズに進むのが大変だった。こうして車椅子側の目線からだと自分たちが歩いている時とは全く違った角度から動作1つに対しても細かい部分で気づくことや感じることがあった。
市役所でも同じように多目的トイレや車椅子の人専用のエレベーターがあると聞いたので投稿するための写真を撮影している中でアポ取りに結構な時間がかかった。高橋さんが市役所の職員さん方に説明するも1度ではっきりとした返事がもらえたわけではなく何とか了承を得たものの、常に職員さんが側にいて変に緊張もしたし、周りの方々の不思議そうに見つめる視線が痛かった。
エレベーターを撮り終えるとNHKの人にインタビューをされて、いきなりのことだったのでうまくいなかったけど周りを見てみると同じようにインタビューされていたり、カメラを回されている子がいて聞こえてくる内容から行き先はそれぞれでバラバラだったけど、感じたことや思ったことは共感できる部分もあって、授業の目的は達成できたと思った。
WheeLog!を利用して自分達でスポットを見つけて投稿して・・・という作業をするうちに今までは意識していなかった部分にまで目を向けるようになったり、健常者が何ともない場所でも車椅子の方々にはここが問題なんだ、と双方の目線から考えられるようになった気がする。この興陽高校の周りだけでも多くのバリアフリーがあふれていて驚いた。投稿前と後を見比べてみてもアイコンの表示数が一気に増えていて、楽しみながらも「こんなところにまでバリアフリーがあるんだ」と初めて知って自分の勉強、知識にもなって、尚かつ情報提供を必要としている車椅子ユーザーの力になっていると考えたら一石二鳥だ。
高校生を対象にWheeLog!を行う授業は全国で初だったらしく、これからWheeLog!を今以上に広めていく為の何かきっかけにでもなったら良いと思った。日本だけでなく、世界にも共通してこの動きがもっと広がってバリアフリーであふれた優しい社会へ変わって行き、健常者と障がいを抱えた人が互いに暮らしやすい環境になってほしい。
今回こうして貴重な体験ができたこと、車椅子ユーザーの方々から生の声だったり話を聞けたことで本当のバリアフリーとは心はもちろん、アポ無しで行ったからこその本来の様子なのだと思う。
短い時間の中で大変に思ったこと、体験してみて分かったこと、気付くこと、、、感じること学ぶことの多かった濃い授業になった。