【台湾バリアフリー視察#1】 インクルーシブ公園|屏東県の「当事者参画」条例と、誰も排除しない遊び場の変革(2026年訪問)

はじめに

2025年12月から2026年1月にかけて、台湾南部の屏東(ピンドン)県、および北部の台北市を訪問し、台湾における最新のバリアフリー対応を視察してきました。

かつての台湾といえば、「段差が多く移動に苦労する」というイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし、現在の姿は一変しています。そこには「障がいがあることは、特別なことではない」という力強いメッセージを都市の根幹に据えた、徹底した街づくりがありました。

本視察報告では、台湾の特徴的なバリアフリー施策である「インクルーシブ公園」「福祉用具センター」「市民スポーツセンター」「歩道整備」に焦点を当て、現地で見たその実態と日本へのヒントを探ります。

シリーズ第1回となる本レポートでは、屏東県を中心に劇的な進化を遂げている「インクルーシブ公園」の取り組みについて詳しくお伝えします。

行政が主導する「公園革命」

屏東県では、現在すべての公園整備において「インクルーシブ(共融)」を標準仕様とする画期的な政策が進められています。2018年に掲げられた「一郷鎮一特色遊戯場(一つの街に一つの特色ある遊び場を)」という計画は、単なる古い遊具の更新に留まりません。

特筆すべきは、「当事者参画」を条例によって制度化した点です。 公園の新設時には、設計の初期段階から子どもたちや障がい者団体が参加するワークショップの開催が義務付けられました。このプロセスが公式な「ルール」となったことで、住民一人ひとりのニーズが反映される、真の住民参加型公園づくりが徹底されています。

行政は部局の垣根を越えて予算を出し合い、安全性や創造性に欠ける従来の「缶詰遊具(画一的な既製品)」を全廃。障がいの有無に関わらず、誰もが「ここは自分のための場所だ」と感じられる遊び場へと一新させたのです。

今回の視察では、その先進事例として県内の4つの公園を巡りました。

視察事例:個性が光る4つの「共融」拠点

1) ​屏東和平共融遊戲場(屏東市)

2019年に開園した、屏東県初の大型インクルーシブ公園です。約2,500坪という広大な敷地全体が完全バリアフリー化されています。

スロープ付きの大型滑り台

目玉は、台湾初となる「車いす対応ジップライン(滑走遊具)」。他にも車いすのまま乗れるブランコや、なだらかなスロープ付きの大型滑り台など、「一緒に遊ぶ」ための工夫が随所に凝らされています。

現地では、元気に遊ぶ子どもたちの傍らで車いすの高齢者が日向ぼっこをしていたりと、世代を超えた交流が日常の風景として溶け込んでいました。一方で、一部の遊具には故障も見られ、高い利用率を維持していくためのメンテナンスという継続的な課題も再確認できました。

公園詳細:https://www.i-pingtung.com/baby/pt_peace

2) 幸福公園(屏東市)

地下駐車場の地上部分を有効活用した、スマートな都市型公園です。飛行機をモチーフにした巨大遊具がシンボルとなっています。

ここでの注目は、介助者が抱きかかえる負担なく利用できる「車いす専用ブランコ」です。

和平共融遊戲場とは異なるタイプの遊具を導入するなど、画一的ではない工夫が凝らされています。園路やバリアフリートイレへのアクセスも完璧に確保されており、都市部におけるインクルーシブ設計の模範といえます。

公園詳細:https://www.i-pingtung.com/baby/pt_happiness

3) 潮州共融遊戯場(潮州鎮)

屏東県の中部にあるこの公園は、単なる遊び場の枠を超え、台湾が目指す「真の共生社会」を象徴する場所です。

最大の特徴は、公園の清掃や維持管理業務に、知的障がいのある方々を積極的に雇用している点にあります。さらに特筆すべきは、広大な公園の敷地内に「デイケアセンター(日照中心)」や、車いす等の相談・調整を行う「福祉用具センター(輔具中心)」が一体的に併設されている点です。

ここでは、障がいのある人が「遊ぶ側」として訪れるだけでなく、「働く側」として社会を支え、あるいは「支援を受ける側」として日常を過ごしています。一つの場所で、多様な立場の人々がごく自然に役割を持ち、当たり前のように時間を共有している。福祉サービスが地域コミュニティのなかに完全に溶け込んでいるその在り方は、まさに「真の共生社会」を体現しており、その先進的な姿には圧倒されるばかりでした。

公園詳細:https://www.i-pingtung.com/baby/chaozhon

4) 竹田共融遊戲場(竹田郷)

日本とも縁が深く、「池上一郎博士文庫」で知られる竹田駅のすぐ近くに位置するこの公園は、地域のアイデンティティを大切にしながら、誰でも遊べる工夫が凝らされた場所でした。

一番のシンボルは、客家(ハッカ)文化の「切り絵」や「万華鏡」をモチーフにした高さ8mの巨大滑り台です。この他にも、屏東県で初めてとなる本格的な「滑歩車(キックバイク)競技場」が併設されていたり、高齢者向けの健康器具が揃っていたりと、幅広い世代が利用できる工夫が見られます。

園内は、巨大滑り台やブランコといった各遊具までしっかりと歩道が整備されており、移動のしやすさが確保されていました。また、バリアフリートイレや身障者用の駐車スペースも完備されています。

決して大きな公園ではありませんが、隅々までインクルーシブな設計が施されており、隣接する川の整備計画とも合わせて、地域の歴史と現代の遊び場がうまく共存している拠点だと感じました。

公園詳細:https://www.i-pingtung.com/baby/zhutian

おわりに

屏東県の事例から見えてきたのは、ハード(遊具)の充実以上に、「当事者参画」というプロセスを条例で担保していることの強みです。

使う人の声を設計に反映させ、さらには管理運営を通じた雇用創出や、福祉拠点との併設までを見据える。公園を単なる「子どもの遊び場」として切り離すのではなく、社会を変えるための「ハブ(拠点)」として捉え直す。

この台湾の情熱的なアプローチには、日本の今後の街づくりをより豊かにするための、確かなヒントが詰まっていました。

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